コラム
子どもの歯並びが悪くなる習慣?頬づえ・口呼吸との向き合い方

目次
学校の写真で気づいた前歯の並びと、家での小さな癖
学校から持ち帰った集合写真で、お子様の前歯の重なりがふと目に入る。思い返すと、宿題中の頬づえや唇をかむ仕草、寝ているときに少し開いた口も気になってきます。歯並びは癖だけで決まるものではなく、生え替わりや顎の大きさ、家族に似た歯の特徴、鼻づまりなども関わります。癖を見過ごしていたとしても、ご自身を責める必要はありません。この記事では、習慣と歯並びの関係を整理し、お子様を責めずに家庭で見たいサインと、歯科医院へ相談する目安をお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 歯並びには癖のほか、生え替わりや顎・歯の大きさ、家族の特徴も関わります。
- 癖の場面や鼻づまり、いびきなどを記録し、相談時に伝えると参考になります。
- 前歯の噛み合わせや噛みにくさが気になるときは、歯科医院で経過を相談できます。
歯並びが悪くなる習慣は?癖だけでは決まらない理由

口呼吸や指しゃぶりは、歯並びや噛み合わせとの関連が研究で報告されています。一方で、頬づえや唇をかむ癖を見かけただけで、それを原因と決めることはできません。
頬づえ・唇をかむ癖は、頻度や時間にも注意
頬づえは顔の片側に、唇をかむ癖は前歯に力がかかる動作です。ただし、たまに頬づえをつく程度で、すぐに歯並びが変わるわけではありません。
大切なのは、こうした癖がどのくらいの頻度で、どのくらいの時間続いているかです。例えば、毎日宿題をするときに同じ側で長時間頬づえをついていたり、無意識に下唇を前歯の間に挟んでいたりする場合は、歯科医院で相談する際に伝えておくとよいでしょう。
頬づえや唇をかむ癖が歯並びに与える影響については、まだ十分な研究があるわけではありません。一方、指しゃぶりについては、癖の頻度や持続時間などが歯並びに関係する可能性が研究されています1。頬づえや唇をかむ癖についても、普段どのようなときに、どのくらい行っているかを把握しておくことが、歯科医院で状態を確認する際の参考になります。
口呼吸や舌で歯を押す癖と、前歯の変化
口呼吸が続く子どもでは、鼻呼吸の子どもと比べて顎や顔の骨格の発育に違いがみられたとする系統的レビューがあります2。口が開いていると舌が低い位置に下がりやすく、飲み込むたびに舌が前歯を押す癖(舌癖)と重なることもあります。
舌の位置や飲み込み方と前歯の噛み合わせの関係は、筋機能の訓練を含めて研究が続いていますが、はっきりした結論を出せるほど根拠はそろっていません3。寝ているときに口が開く理由も、鼻づまりや寝る姿勢などさまざまです。歯並びの問題だけで説明しないようにしましょう。
指しゃぶりが続く場合と、成長による違い
指しゃぶりが続くと、奥歯を噛んだ状態でも前歯が噛み合わない「開咬(かいこう)」がみられることがあります4。習慣があったかどうかだけでなく、続いた期間や毎日かどうかによる違いも検討されています1。
小学2年生ごろは、前歯が永久歯に生え替わり、顎も成長を続けている時期です。幼い頃の指しゃぶりの影響が残っているのか、今も続く癖が関わっているのかで、見方は変わります。当院では、年齢だけで一律に判断せず、今の噛み合わせと癖の様子を合わせて確認することを大切にしています。
生え替わり・遺伝・顎や歯の大きさも確認したい
「癖を直せば歯並びも元に戻る」と考えたくなりますが、話はそう単純ではありません。永久歯の前歯は乳歯より大きく、生え替わりの途中では一時的に重なったり、すき間が空いたりして見えることがあります。
さらに、顎の大きさと歯の大きさのバランスや、家族に似た骨格の特徴(遺伝)も歯並びに関わります。習慣の影響が研究で示されている部分はあるものの21、それだけで全体を説明できるわけではありません。
ポイント
原因を一つに決めず、癖・成長・体質の組み合わせで見ていくことが、お子様の状態を正しく知る近道です。
お子様を責めずに、家庭で癖と歯並びを見守る方法

家庭でできるのは、癖をやめさせることより、いつ・どんな場面で出るかに気づいておくことです。その気づきは、歯科医院で相談するときの大切な判断材料にもなります。
食事中・勉強中・就寝中に見たいサイン
一日の中で、癖が出やすい場面は大きく三つに分けられます。
- 食事中:片側ばかりで噛む、口を開けたまま噛む、前歯で噛み切りにくそうにしている
- 勉強中・テレビを見ているとき:頬づえをつく側、唇をかむ・吸う、舌が前歯の間から見える
- 就寝中:口が開いている、いびき、鼻が詰まったような音、歯ぎしり
口呼吸については顎の発育との関連も報告されているため2、就寝中の様子は見ておきたい項目のひとつです。どれかに当てはまっても、すぐに歯並びと結びつけなくて構いません。
癖の回数より、気づいた場面と変化を記録する
回数を数えようとすると、お子様をずっと見張ることになり、親子ともに疲れてしまいます。続けやすいのは、気づいたときに「日付・場面・どちら側か」を一行だけ残す方法です。
たとえば「宿題中、右手で頬づえ」「朝から鼻づまり、寝ている間も口が開いていた」。スマートフォンのメモで十分です。前歯の見え方や噛み方で気になったことも、一言添えておきましょう。
この記録は自宅で診断するためのものではありません。歯科医院で状況を具体的に伝えるための材料として考えてください。
注意を繰り返すより、一緒に気づける声かけから
「また頬づえ!」と注意を重ねるほど、お子様が癖を隠すようになることがあります。癖の多くは無意識に出ているもの。当院では、責めるより一緒に気づく形のほうが続けやすいと考えています。
声をかけるなら「いま手があごに来てたね、気づいてた?」と事実だけを伝える程度で十分です。頬づえは机と椅子の高さが合わない、足裏が床につかないといった姿勢から出やすいこともあり、環境を整えるほうが話は早い場合もあります。
口周りの筋肉のトレーニングも研究されていますが、効果を示す根拠は限られています3。家庭の取り組みを治療の代わりにはせず、できなかった日があっても続けていること自体を認めてあげてください。
鼻づまりがある日は、口を閉じさせる前に呼吸を確認
鼻が通りにくい状態で「口を閉じて」と言われても、お子様は息苦しくなるだけです。まずは鼻で楽に息ができているかを確かめましょう。
口が開く、いびきをかくといった様子が鼻づまりの時期と重なるなら、アレルギー性鼻炎や、のどの奥の扁桃・アデノイドの影響が関わっている可能性もあります。口呼吸と顎の発育の関連を示す報告もあるため2、続く場合は歯科医院への相談とあわせて、小児科や耳鼻咽喉科で鼻やのどの状態を診てもらうのもひとつの方法です。
ポイント
口を閉じる練習より先に、楽に鼻呼吸ができる状態かどうかを確かめることから始めましょう。
家庭で様子を見る?歯科医院へ相談する目安と伝え方
前歯が噛み合わない・噛みにくいときは相談を
次のような様子があれば、一度歯科医院で確認しておくとよいでしょう。
- 奥歯で噛んでも、上下の前歯の間にすき間がある
- 麺や海苔を前歯で噛み切りにくそうにしている
- 前歯の重なりやねじれが目立ってきた
- 片側でばかり噛む、顎が左右にずれて見える
指しゃぶりの習慣と前歯が噛み合わない状態との関連は報告されており1、癖が続いている場合はなおさら早めの確認が判断の助けになります。学校の歯科健診で指摘を受けたときも、相談のきっかけにしてください。
癖を見直しても、歯並びを自分で動かそうとしない
習慣の見直しは家庭で進められますが、歯を指で押す、市販品や手作りの器具で歯を動かそうとするのは控えてください。力のかけ方によっては歯の根や歯ぐきに負担がかかり、噛み合わせが思わぬ方向にずれることもあります。
診察の結果、習慣を見直しながら経過を見る場合もあれば、歯や顎の状態によって矯正治療を検討する場合もあります。早い時期の矯正や筋機能への働きかけを調べた研究でも根拠の質にはばらつきがあり3、どの方法が合うかは個別に判断します。
矯正治療は多くが自由診療(公的医療保険が適用されない)です。治療に伴って、主に次のようなリスクや副作用が起こることがあります。
- 痛み・違和感:装置をつけた直後や調整の後、歯が浮いたような痛みや噛みにくさが出ることがあり、続き方には個人差があります
- むし歯・歯ぐきの炎症:装置の周りに汚れがたまりやすく、歯みがきが不十分だとむし歯や歯肉炎が起こりやすくなります
- 口の中の傷・口内炎:装置が頬や唇の内側に当たり、傷や口内炎ができることがあります
- 歯の根が短くなる(歯根吸収)・歯ぐきがやせる:歯を動かす過程で、歯の根の先が短くなったり、歯ぐきが下がったりすることがあります
- 後戻り:治療後に歯並びが元に戻ろうとすることがあり、保定装置(リテーナー)を一定期間使う必要があります
- 計画どおりに進まないこと:取り外し式の装置は使用時間が足りないと、期間が延びたり、思うように歯が動かなかったりすることがあります
- まれに起こること:顎の関節の痛みや音、歯の神経への影響、装置の金属によるアレルギーなどがみられることがあります
永久歯が生えそろう前に行う小児期の矯正(第1期治療)は、治療期間やその後の経過観察の期間に個人差があります。通院の間隔や装置の調整などのための通院回数も、お子様の状態に応じて医師が判断します。費用は、日本小児歯科学会のQ&Aでは、混合歯列期の料金に15万〜60万円と幅があるとされています5。この費用に検査・診断料、装置代、毎回の調整料などが含まれるかどうかは医療機関ごとに異なり、調整料を別に設けている場合は1回あたり数千円程度かかることがあります。また、永久歯がそろった後の本格的な矯正(第2期治療)に進む場合は別に費用がかかります。期間・回数・費用は、お子様の歯や顎の状態や使う装置によっても変わります。ここで挙げた費用は学会が示す目安であり、当院の費用ではありません。当院での治療期間・通院の間隔・費用は、診察のうえでご案内します。
説明を聞き、納得してから決めることをおすすめします。
診察では癖だけでなく、生え替わりと顎の状態も確認
相談では、お口の中を見るだけでなく、癖の様子、生え替わりの進み具合、顎の大きさと歯の大きさのバランスを合わせて確認します。口呼吸と顎の発育の関連も報告されているため2、鼻づまりやいびきの有無も伺います。
必要に応じて、レントゲンでまだ生えていない永久歯の位置を調べたり、歯科用CTやセファロ(頭部を一定の条件で撮るレントゲン)で顎の成長の傾向をみたりすることがあります。
当院では、目の前の歯並びだけを見るのではなく、なぜそうなったのかを確かめることを大切にしています。初診時のお話に加え、検査結果をもとに改めて方針をご説明し、どの検査が必要か、どのくらいの間隔で経過を見るかはお子様ごとに決めていきます。
歯科相談をするときに伝えたい記録と質問
歯科医院で相談する際は、ご家庭で気づいたことをメモしておくと、普段の様子を伝えやすくなります。例えば、どのようなときに癖が出るのか、頬づえは左右どちら側につくことが多いのか、鼻づまりやいびきはないか、歯並びや噛み方に気になる変化はないか、といったことです。気づいた範囲で記録しておくと、診察時の参考になります。
そのうえで「今は経過観察でよいか」「どんな検査が必要か」「次はいつ見せればよいか」を尋ねると、通院の見通しが立てやすくなります。相談や検査の費用は医療機関によって異なり、保険診療か自由診療かでも変わります。矯正を前提とした自由診療の場合、矯正相談の料金(相談料を設けていない医療機関もあります)や、レントゲンや歯型などを含む精密検査・診断の費用も医療機関ごとに異なります。当院の費用は診察のうえでご案内します。
平日に親子の時間を取りにくいご家庭もあると思います。診療日や時間はアクセスページでご確認ください。記録を手に歯科医院へ相談すると、癖の見直しを続けるか、別の方法を考えるか、整理する助けになります。
よくある質問
Q. 頬づえをやめれば、歯並びは元に戻りますか?
A. 頬づえを見直すことは大切ですが、それだけで歯並びが戻るとはお約束できません。歯並びには生え替わりや顎・歯の大きさ、遺伝なども関わるため、気になる場合は歯科医院で今の状態を確認したうえで、経過の見方を相談してください。
Q. 寝ているときだけ口が開いています。相談したほうがよいですか?
A. 鼻づまりやいびきを伴う、毎晩のように続くといった場合は、一度相談してください。歯科医院では歯並びや噛み合わせを、小児科や耳鼻咽喉科では鼻やのどの状態を確認できます。
Q. 小学2年生で歯並びの相談をするのは早いですか?
A. 前歯が生え替わり、顎も成長している時期なので、状態を一度見ておくこと自体に早すぎることはありません。相談した結果、すぐに治療を始めず経過を見る判断になることもあります。
Q. 親の歯並びが気になる場合、子どもも似ますか?
A. 顎の形や歯の大きさは家族で似ることがあります。ただし習慣や成長の影響も重なるため、親と同じ経過をたどるとは限りません。ご家族の歯並びのことも、相談時に伝えていただくと判断の参考になります。
参考文献
1. Gao C, Wang M, He H, et al. Association between Non-nutritive sucking habits and Anterior open bite: A systematic review and meta-analysis. BMC Oral Health. 2025. PMID: 40619361 / DOI: 10.1186/s12903-025-06040-z
2. Zhao Z, Zheng L, Huang X, et al. Effects of mouth breathing on facial skeletal development in children: a systematic review and meta-analysis. BMC Oral Health. 2021. PMID: 33691678 / DOI: 10.1186/s12903-021-01458-7
3. Koletsi D, Makou M, Pandis N. Effect of orthodontic management and orofacial muscle training protocols on the correction of myofunctional and myoskeletal problems in developing dentition. A systematic review and meta-analysis. Orthodontics & Craniofacial Research. 2018. PMID: 30152171 / DOI: 10.1111/ocr.12240
4. デンタルファイルNo.27 子どもの歯と指しゃぶり | 三河歯科衛生専門学校. https://mikawa-dental.ac.jp/dental_file/mdhc_dentalfile27.html
5. 日本小児歯科学会 | Q&A. https://www.jspd.or.jp/question/qa/
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